
名護市長選で圧勝 「辺野古移転」封じる稲嶺市長の“秘策”
Gendai.Net 2014年1月21日 掲載

再選を果たした稲嶺名護市長/(C)日刊ゲンダイ
まず、稲嶺に聞きたいのは、具体的にどうやって、政府の埋め立てを阻止するかだ。民意を無視するなんて、朝飯前の安倍政権は21日、辺野古への基地移転を前提に代替施設の設計などの受注を募る入札公告を出す。どんどん勝手にコトを進める腹だ。それに対して、稲嶺はこう言った。
「これから調査であったり、工事の手続きであったり、いろいろ出てくると思います。その中で、ひとつひとつ対応していくことになってくると思います。一番、建設予定地に近い辺野古などの漁港は、名護市長の管理下にあります。そこを利用して調査をする場合には、市の許可や同意を得る必要がある。その場合には、市長の権限を行使していくことになると思います」
確かに、埋め立てを進めるための調査、資材置き場などで市の協力が必要になる場面はたくさん出てくる。しかし、稲嶺は埋め立てを前提にした話し合いには一切、応じない腹だ。
市の協力が得られなければ、工事はできない。埋め立ては阻止できるという論法なのだが、そこは安倍官邸もシタタカだ。イザとなれば、法律を改正しても、市長の抵抗を排除しようとするだろう。その場合、どうするのか。
「日本は民主主義国家です。これだけの反対の意見があるのを無視して、強硬に進めるというのは、地方自治の侵害、名護市民の人権にもかかわる。これから、移設計画がスムーズにいくとは思いません」
さらに稲嶺には秘策があった。米国の協力を取り付ける気だ。米国は基本的に地元の反対を押し切ってまで、基地を移転する気はない。そこを稲嶺は突くという。日刊ゲンダイ本紙が「米国に行って訴えるつもりはあるか」と聞くと、こう答えた。
「以前にもアメリカに行きました。議員にお会いをしたのですが、辺野古の移設について(沖縄の実情を)知らない人が多かった。日本政府はアメリカの方にきちんとした情報を提供していないのです。だから、私が行って、直接、民意を伝える。話をすることで、理解者が増えると思いますので、機会があれば、ぜひ、アメリカに行きたいと思います」
なにしろ、稲嶺には2万票の民意がある。4000票差で辺野古埋め立て賛成派を蹴散らした実績がある。これが武器だ。
「1996年の返還合意以来、市長選が行われてきましたが、今回ほど争点がはっきりした選挙はなかったと思います。自民党や政府からの強い圧力で、県出身の自民党国会議員や自民党県連が県外の公約を翻して、辺野古へということになった。そして、埋め立てを承認した知事の『いい正月が迎えられる』という発言もありました。さらに新しく計画されているV字滑走路案は100年以上使用可能だということがうたわれています。沖縄は68年間、基地の負担、重圧によって、人権を否定されるようなことが続いてきた。それが、あと100年も続くことになると、子や孫に顔向けが出来ないのではないか。そういうことが市民、有権者の判断の大きなポイントだったのではないかと思います。4000票差についても、国の進め方、権力による恫喝への反発として表れてきた結果ではないかと思います。辺野古の海にも陸にも基地を造らせない。その信念をしっかり貫いていく覚悟であります」
さあ、安倍政権はそれでも埋め立てを強行できるのか。やれるものならやってみろで強行すれば、本当に流血の事態になる。その瞬間、米国も「安倍には任せておけない」ことを思い知ることになる。
(取材協力・横田一)
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